風の章:問いの回廊──思考が描く、見えない地図
風は、瞳にうつらないが、いつもそこにいる。
触れることはできないけれど、
その存在を、私たちは毎日のどこかで感じている。
髪が揺れる。
カーテンがそっとふくらむ。
風は、気配として世界に在る。
タロットの世界で、風の元素は「知性」「思考」「言葉」「判断」「選択」「距離感」などを象徴している。
「正義」「星」「隠者」「運命の輪」──
風に満ちたカードは、感情に流されることなく、
“考えること”や“見極めること”に光をあててくる。
火は「動く力」。水は「感じる力」。
風は「整える力」だ。
散らばった感情や衝動を、
いまの自分に必要なかたちへと、
静かに組み直していく力。
愚者──物語の旅人が、感情の湖を渡った後に訪れる場所。
ここでは、思考が道となり、問いが風となって吹き抜ける。
「星」──希望のカード。
どんな夜も、遠くに小さな光があることを教えてくれる。
「正義」──均衡のカード。
剣と天秤は、感情の揺れを見つめながら判断を促す。
「隠者」──内省のカード。
外の世界より、自分の声に耳を澄ませる勇気をくれる。
風のカードたちは、答えを押し付けてこない。
むしろ、「自分で選んでいい」とそっと語る存在。
そこには厳しさもあるけれど、自由もある。
風は、ときに冷たく感じるかもしれない。
でもその冷たさは、感情と距離をとるための余白。
ぐるぐる考えすぎてしまう自分に、
そっと呼吸のスペースを届けてくれる。
この章を読みながら、
あなたの中に吹いている風に、耳を澄ませてみてほしい。
最近、何に迷っただろう?
何を選べずに立ち止まった?
誰かの言葉に揺れて、
自分の本当の気持ちが見えなくなっていなかっただろうか。
風のカードは、そんな「曖昧さの中の静けさ」を映す。
決めつけないこと。
急がないこと。
問いを問いのまま、少しだけ長く眺めてみること。
タロットは、「こうすべきだよ」とは語らない。
代わりに、「あなたはどうしたい?」と問いかけてくる。
誰かに合わせた答えではなく、
自分の選びたいことを知るために──
風は今日も吹いている。
──思考は地図になる。
その地図は、言葉となり、選択となり、
いつか「自分らしさ」へとつながっていく。
風の章が語るのは、
問いを持っていてもいいということ。
まだ決まっていないという状態も、
旅の一部であるということ。
それは、進むということと同じくらい、
大切な“旅のかたち”なのだ。
▼ この章で語ったカードたち(風のアルカナ)
⚖️ 正義:内なる基準を問う
⚖️ 正義:揺れる秤の行方