地図を手にした旅人へ──終わりではなく、始まりの場所
風が少しやんでいた。
水は静かにたまり、
火はそっと灯の強さを和らげ、
地がやさしくそのすべてを受け止めていた。
4つの元素をめぐる旅は、ひとつの輪を描いて終わったように見える。
けれど、それはほんとうに“終わり”だったのだろうか。
世界──タロットで最後に描かれるこの一枚は、
完成ではなく、“ひらかれた円”なのかもしれない。
すべての経験が統合され、
その場所からまた新しい旅が始まっていく。
愚者は、最初の旅で多くを得た。
でもその眼差しは、まだ遠くを見ている。
知ったことよりも、知らないことの多さに心が動いている。
──すべてをめぐった先に、人はもう一度、自分自身に戻ってくる。
それは、過去の自分ではなく、
新たな問いとともに生まれ変わった“いまのわたし”。
もう一度、地図をひらこう。
その手には、火・水・風・地が、前とは違うかたちで宿っている。
願いも揺らぎも、問いも根も──
すべてが“次の物語”の道しるべになる。
このページをとじるとき、
あなたの旅はまだ続いている。
静かな余白のなかで、
ふと風がまた、語りかけてくるかもしれない。
──次の地図は、どんな声を宿しているだろう。
それを知るのは、きっと、あなた自身の一枚をめくったとき。
旅は、終わらない。
ただ、少し深く息をするだけだ。
──今、あなたの中に、静かに吹いている風は何を運んでいるだろう。
それは、誰かの言葉? 過去の記憶?
それとも、まだ名前のない願いかもしれない。
その風を、少しだけ見つめてみてほしい。
きっとそこに、次の一枚が、そっと重なっているから。