第二章:揺れる心に、選びとる手を添えて
ある日、愚者は分かれ道に立った。
道はふたつに分かれ、どちらにも風が吹いていた。
その先には「恋人」がいた。
彼らは互いに見つめ合いながら、愚者を迎えた。
「どちらの道にも意味はあるよ。けれど、君が選ばなければ意味にならない。」
愚者は、胸の奥にあった言葉を手に取った。
それは「選ぶ」という行為。
何かを手にすることは、何かを手放すことでもある。
けれど、選びとった瞬間、心には確かな輪郭が生まれた。
選んだ道には「戦車」が待っていた。
その車輪は意志の力で動いていて、乗る者の心に呼応した。
戦車は言った。「選ぶだけでは足りない。進む意志がなければ、選びはただの夢になる。」
愚者は、車に乗り込んだ。
そして初めて、意志が世界を動かす音を聞いた。
やがて道は穏やかになった。
丘の上で「力」が待っていた。
彼女は獅子のたてがみを撫でながら、語った。
「進むというのは、強さではなく、やさしさのかたちかもしれないわ。
自分を責めるでもなく、誰かを支配するでもなく——ただ、保ち続けること。」
愚者は胸に手を当てた。
その拍動が、彼に「進み続ける勇気」を与えていた。
しばらく歩くと、何もない場所にたどり着いた。
そこにいたのは、「隠者」。
彼は灯火を持って、静かに語った。
「君の進んだ道は、正しかったかもしれないし、間違いだったかもしれない。
でも、それを確かめるためには、ひとりで立ち止まる時間も必要なんだ。」
愚者はその灯に照らされながら、自分の選択を見つめた。
悔いも喜びも、どちらも彼の一部だった。
そして、空がめぐったとき、「運命の輪」が現れた。
風がぐるりと回り、時間が跳ね返るような音を立てた。
「偶然と思えることにも、必然の種はある。
君が選ばなかった道は、いつか別の形で巡ってくる。」
愚者はその言葉に少し震えた。
でも、それでも前を向いた。
巡る輪の中でも、自分は一歩を重ねていくと決めたから。
そして最後に、ひとりの女性が天秤を持って立っていた。
それは「正義」という名の女性。
彼女は言う。「選び、進み、揺れ、振り返り、今ここにいるあなたが、本当の“選択”なのよ。」
愚者はうなずいた。
あの分かれ道の風は、今も彼の足元に吹いていた。
でももう、風に流されることはなかった。
彼自身が、選びとった風だったのだから。
- 恋人:選びとる愛
- 恋人:揺れるこころ
- 戦車:意志のままに進む
- 戦車:暴走する衝動
- 力:やさしい強さ
- 力:抑えきれぬ衝動
- 隠者:灯火とともに歩く
- 隠者:閉ざされた灯火
- 運命の輪:めぐるとき
- 運命の輪:止まった時計
- 正義:内なる基準を問う
- 正義:揺れる秤の行方
この章が語るものは終わりました──でも、旅路の扉はまだ開かれています。