時の輪舞・エピローグ

エピローグ:静かな風が、物語を閉じる

旅人の姿は、いつのまにか誰の目にも見えなくなっていた。
でも、彼の足音は、世界のあちこちに静かに響いていた。

星はまだ空にある。
月は鏡のように揺れている。
太陽は、また昇った。
審判の声は、土の中にも届いている。
そして世界は、静かに輪を描いていた。

愚者はどこへ行ったのだろう。
あの白い袋には、何が残っていたのだろう。
それは、読者ひとりひとりの足元にそっと置かれている。

この物語を読んだあなたの中にも、旅の軌跡がひとつ宿っているかもしれない。
それは答えではなく、問いのかたちをしている。
この先をどう歩くか。どんな風を纏って、何を選び、何を手放すか。

アルカナの扉は、まだ開いている。
いつでも、誰でも、愚者になれる。
無垢な背中に風がふいたとき、また新しい物語が始まる。

そしてこのページを閉じたあとにも、あなたの中で輪舞は回り続けるだろう。
静かに、やわらかく、でも確かに。

ありがとう、旅を歩いてくれて。
さようなら、でも――また会いましょう。

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この章が語るものは終わりました──でも、旅路の扉はまだ開かれています。

読んでくれたあなたに、良いことがありますように。