

はじめに|武将がタロットを読んだら?
タロットカードは、未来を予言する道具ではありません。
それは、今の自分の内側を映す“鏡”のようなもの。
もし、戦国武将がこの鏡を覗き込んだら── どんな言葉で、どんな覚悟で、カードを読み解くのでしょうか。
このシリーズでは、歴史上の人物がタロットカードを手にしたらどう読むかを、彼らの語り口で描いていきます。 第1章は、天下統一を夢見て散った男・織田信長。
「是非に及ばず」──その言葉に込められた死生観と、タロットの哲学が交差する読み物です。
信長が読むタロット|大アルカナ22枚の語り
もし、織田信長がタロットカードを読むことがあれば、それは私たちの知る表現とは異なるのではないでしょうか。「信長ボイス」とは、タロットカードの通常の解釈を「織田信長ならどう表現・解釈するのか」を書き表したものです。

No. | カード名 | 通常解釈 | 信長ボイス |
---|---|---|---|
0 | 愚者(The Fool) | 自由・冒険・未知の旅立ち | 「何も恐れるな! 天下を取る者は常に愚者のごとく、誰も通らぬ道を行くのじゃ!」 ―「臆することなかれ。道は自ら切り拓くものぞ」 |
I | 魔術師(The Magician) | 才能・始まり・創造力 | 「才覚は使わねば腐る。雑兵のごとく与えられたことだけをするな! 己の道を創り出せ!」 |
II | 女教皇(The High Priestess) | 直感・知恵・静けさ | 「静かなる知恵こそ、戦の裏を制す。表に出ずとも、心眼で敵を射よ。」 |
III | 女帝(The Empress) | 豊かさ・愛・実り | 「愛と実りは、国を豊かにする礎ぞ。武力だけでは天下は治まらぬ。」 |
IV | 皇帝(The Emperor) | 権力・統率・支配 | 「権力は奪うもの、与えられるものではない。望むならば敵を討ち払え!」 |
V | 法王(The Hierophant) | 伝統・秩序・導き | 「古き掟も時に必要よ。しかし囚われすぎれば前へは進めぬ。使いこなせ!」 |
VI | 恋人(The Lovers) | 愛・絆・選択 | 「愛もまた戦よ。選ぶ覚悟なき者は、恋も天下も失うのだ。」 |
VII | 戦車(The Chariot) | 勝利・前進・意志の力 | 「突き進め! 迷うな! 勝つと決めたなら、戦車のごとく押し切るまでよ!」 |
VIII | 力(Strength) | 勇気・忍耐・内なる強さ | 「真の力は剣にあらず、己を制する心にある。怒りを御せぬ者は将にあらず。」 |
IX | 隠者(The Hermit) | 内省・孤独・探求 | 「孤独を恐れるな。暗闇に灯る一灯が、天下の道を示すこともあるのだ。」 |
X | 運命の輪(Wheel of Fortune) | 転機・運命・流れ | 「天下の歯車が回る時、誰も止められぬ。抗うな、掴み取れ!」 |
XI | 正義(Justice) | 公正・均衡・選択の結果 | 「正義とは勝者が語るもの。勝てぬ正義はただの理想ぞ。」 |
XII | 吊るされた男(The Hanged Man) | 犠牲・忍耐・新たな視点 | 「一時の屈辱を飲み込めぬ者は、大義を掴めぬ。忍びてこそ未来は開ける。」 |
XIII | 死神(Death) | 終焉と再生・変容 | 「“是非に及ばず”。死は恐れるものにあらず。終わりがあれば、新しき世が始まるのだ。」 |
XIV | 節制(Temperance) | 調和・バランス・融合 | 「剛のみでは折れる。柔のみでは流される。剛柔併せ持つ者こそ強き者よ。」 |
XV | 悪魔(The Devil) | 束縛・欲望・依存 | 「欲に呑まれるな。欲は使うもの。わしは酒に呑まれぬが、酒を使う!」 |
XVI | 塔(The Tower) | 崩壊・破壊・突然の変化 | 「城は崩れようとも、また築けばよい。崩壊を恐れるな、破壊こそ新しき始まりじゃ!」 |
XVII | 星(The Star) | 希望・導き・未来 | 「理想を持ち、信念に生きよ! 星なき者は戦う前から負けておるわ!」 |
XVIII | 月(The Moon) | 不安・幻想・潜在意識 | 「幻に惑わされるな。月の影を見抜けぬ者は、敵の罠に沈むのみぞ。」 |
XIX | 太陽(The Sun) | 成功・喜び・生命力 | 「勝利の太陽は必死に生き抜いた者にこそ昇る。生涯を光らせよ!」 |
XX | 審判(Judgement) | 再生・目覚め・過去からの解放 | 「過去に縛られるな! 立ち上がれ! 今こそ己の真価を示す時ぞ!」 |
XXI | 世界(The World) | 完成・成就・統合 | 「天下布武の成就、これぞ“世界”。されど終わりは次なる始まりに過ぎぬわ!」 |
本能寺の変をタロットで読む|4人の視点
1582年6月2日──本能寺の変。 信長が「塔」のカードを引いたとき、すべては崩れた。
だが、その崩壊の中にも、それぞれの人物が“自分のカード”を引いていたとしたら?
🔥 信長のカード:塔(The Tower)
通常解釈:
崩壊・破壊・突然の変化
信長ボイス:
「城は崩れようとも、また築けばよい。崩壊を恐れるな、破壊こそ新しき始まりじゃ!」
―「案ずることなかれ。崩れた塔の跡に、次の者が城を築く。それが歴史ぞ」
信長の哲学:
塔は終わりではなく、再構築の始まり。破壊を恐れず、次の時代を切り拓く者こそ、歴史を動かす。
🌸 濃姫のカード:女帝(The Empress)
通常解釈:
愛・実り・女性性・守り
濃姫ボイス:
「殿が消えても、殿の志は消えませぬ。この身が女帝ならば、残る者を守り、育みましょうぞ」 ―「愛は失われぬ。混乱の中でも、人の心を結びつけ、後の世に希望を残す」
濃姫の哲学:
女帝は、力ではなく慈しみで未来を育てる存在。混乱の中でも、愛と志を守り抜く者が、次の世を照らす。
⚔ 森蘭丸のカード:戦車(The Chariot)
通常解釈:
勝利・前進・意志の力
蘭丸ボイス:
「最後まで殿と共に戦う。たとえ勝ち目がなくとも、この命は信義のために!」
―「忠義とは、勝敗を超えた魂の証ぞ」
蘭丸の哲学:
戦車は、勝利の象徴ではなく、意志の象徴。忠義に生きる者は、敗れてもその魂が光を放つ。
🎲 明智光秀のカード:運命の輪(Wheel of Fortune)
通常解釈:
転機・運命の逆転・予測不能な流れ
光秀ボイス:
「この一手が歴史を変える。だが運命の輪は、果たしてわしの味方をするのか…」
―「運命は掴むものか、翻弄されるものか──それは、己の覚悟次第ぞ」
光秀の哲学:
運命の輪は、誰にとっても公平ではない。だが、動かす覚悟を持つ者だけが、時代の歯車に手をかけられる。
🧭 4枚のカードが語る「崩壊と再生の物語」
信長の「塔」がすべてを崩した。 濃姫の「女帝」が愛を残し、蘭丸の「戦車」が忠義を示し、光秀の「運命の輪」が時代を転がした。
それぞれのカードが、ただの象徴ではなく“生き方”を語っている。
本能寺の変は、歴史の断絶ではなく、4つの魂が交差した瞬間だったのかもしれません。
タロットは、未来を予言するものではない。 それは、今の自分の内側を映す鏡。
そして、信長が読んだカードは── その鏡に、烈しき覚悟と、静かな余白を刻んでいたのです。
信長の死生観とタロットの哲学
「人生五十年、下天のうちをくらぶれば夢幻のごとし」 この言葉が意味するのは、ただの無常ではない。
信長は“夢”に命を賭けた。だからこそ、塔が崩れても、死神が微笑んでも、彼はこう言ったのだ。
「是非に及ばず」
それは、諦めではなく、覚悟の言葉。
その覚悟は、死を前にしてなお揺るがず。
だからこそ信長は、時代を超えて人の心を震わせ続けるのです。
タロットのカードが語る「崩壊」「終焉」「転換」は、信長にとってはすべて“終わり”ではなく“始まり”だったのかもしれません。
タロットは「未来を当てる道具」ではなく、「自分の内側を映す鏡」。
武将もまた、戦の前に己を見つめる。
信長がカードを手にしていたなら── それは戦略を練るためではなく、己の覚悟を確かめるためだったのではないでしょうか。
次回予告|太閤検地をタロットで読む?
次章では、天下人・豊臣秀吉が登場します。 信長の烈しさとは異なる、柔と剛を併せ持つ男。
彼がタロットを読んだなら──それは、民の暮らしを測る“太閤検地”のような読み方かもしれません。
「秤にかけるは米か、心か──わしなら、どちらも測るぞ」
次回もどうぞお楽しみに。

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ステキな日になりますように。

